随筆

「巻頭言 叙勲と盗作と立体出版など」

★秋の叙勲で服部嘉香文博(81)が勲四等旭日章を、11月10日尾崎喜八、大木惇夫、佐伯孝夫諸氏が紫綬褒章をお受けになったのはメデタイ。服部博士が早大でなく東大の教授だったら勲二等だし、尾崎氏らが伴食大臣を一度でもしていたら勲一等位になったろう。が、精神文化面で多大の功業を顕している詩人に勲章を贈るとすれば、政府でなくて我々であるのが本筋だと考え、筆者は誰に大勲位、誰に勲一等をと検討している。幼時、野菊を友の胸につけてやり“お前を大将とする”といって共に喜んでいたのと同じ夢だが、この方が楽しい。筆者など“無冠の帝王”(野人)だから、大嫌いな官憲から大勲位をやる(絶無だが)といわれても断わる代りに、埋れた無名の詩人に叙勲を(有名なエライ詩人に贈らなくともいい)と想って楽しんでいる。痴人の夢(詩はそんなもんだ)と嗤わば嗤え。
★最近紙上を賑わしている詩人が多少いるが、二、三拾うと東京数寄屋橋で沖縄・ベトナム問題でハンストの江口榛一、脱走米兵四人をソ連へ脱出させたヒッピー(フーテン)詩人という山尾三省、自伝2巻出版で大祝賀会を開いて貰った永井叔等々、イヤハヤ。さぞ詩集が沢山売れることだろうテ。
★盗作問題は各分野にあって問題になっているが、皆金につながっている。金にならぬ詩なんかに盗作はない。歌謡界の盗作は珍しくないが、筆者が直接関係し仲介の労をとっているのに三件ある。同じ歌謡詩人仲間のことで相当名のある連中ゆえ、どうやら表沙汰にせず円満解決へこぎつけヤレヤレ。実力のある連中がなぜ泥棒になるのか判らん。結局黄金魔にとりつかれたのだろう。
★本は読む物と思っていたら、現代っ子相手に文字+(プラス)カラー写真+ステレオレコード三位一体の立体出版が大いにモテ出した。もう「読む考える」時代でなく「見る聴く」感覚の自己喪失教育時代でオメデタイ。詩集ブーム時代だから、詩+カラー写真(詩人の筆蹟も入れて)+ステレオレコード(詩人自身の自作朗読、故人の場合、弟子でも代読、或いは詩曲挿入)で立体出版したら儲からないか。詩人も印税が沢山入り多額納税者になれるかもしれん。誰かやらないか。
★オメデタづくしの時代、どうやら筆者もオメデタイ人間だから、あけましてオメデトウと(新年号ゆえ)早いがオメデタ族に御慶を贈っておく。(42・11・26)

掲載誌:『日本詩』 第26巻・復刊81号 通巻181号 1968 1月号