どれもみんな閉じたきり
年輪の襞の奥深く閉じこもっている目 石のうちらに潜んでいる目 ふるえている風の尾に縋っている目
それらは 私の目が閉じたきりになったとき
一斉にかっと見開いていつまでも私をじっと見守るつもりなんだろうか
そこここに潜み隠れて何も見まいと閉じたきりのやさしい目よ
もうとっくに神のいない世になったのだ
みんなすいすいと現われ出て 大きく見開いて
そこらに何が起っているかをじっと見定めるがいい
今日も黒い風に逆らって そこらに潜み隠れている臆病な目へ叫んでいく
(40・9・7后3)
掲載誌:『日本詩』第23巻・復刊60号 通巻160号 1965 12月号