随筆

「詩とは?」

 十月八日の“詩話会”のお写真なつかしく拝見・みんな好男子にとれているし、和やかな様子が窺われて嬉しく思います。
 都築氏、大分ふけた感じですし、高田氏は若返った(和服のせいでしょうか)感じ、貴兄もスマートで、映画俳優の座談会といった感じで微笑ましいです。いい記念になります。
 表紙絵、渋く、巻頭言の“入れ物がない両手でうける”など、感心しました。今日は十二日、御会合が盛大であるよう、祈ります。
 先月の会でのテーマ、詩とは?民謡とは?は、いつも新らしい懐疑で論議の尽きぬところ。
“なぜ詩をかくか”“なぜ歌をうたうか”の問題ですね。 
“芸術と大衆”の問題と同じでいつでも、どこでも論議の岐れるところ。そこから進展があるので、無気力では何にもなりませんね。
 私などは他人様がどう思われようと書かずに居れず、歌い出さずに居れなくって書いたり、歌ったりする方です。
それでいいんだ、と思っています。苦行僧が一心に仏を念じて仏像を刻む――それに似ているものでしょうか。名利を離れての貴兄の努力もそれだと思います。技法としては色色ありましょうし、必要でしょうが根本は一つです。本を忘れて末を追う 時流は別のものでしょうね。
[大橋病院四五号室にて二、一六]

掲載誌:『時雨』62号