「蝶と花と」

小さい白い蝶が大きい花に潜りこんでいた
そのまま花になったりしていたが
三日月が斜めに時間をすべりおりていってしまってから
蝶も花も消えてなくなってしまった

ただ 海から這いあがって来た白い風が
そこらをうろうろ尾をふっているだけ

消えた蝶と花のいた小石へ
どっからか 祭ばやしの横笛が風を慕ってやってきた
(40・9・11・后1・30駒込―上野)

掲載誌:『日本詩』朝森弓子詩集「山襞」出版特集 第23巻・復刊59号 通巻159号 1965 11月号