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「谷に埋もれて(遺稿)」

うす紫に昏れなずむ
山の向こうの空の果て
群れて声なくゆく鳥よ
揃うて還るはいつじゃやら

しょせん霧捲く山の中
日向(ひなた)乏しと啼くな鳩
老いた母(かか)さの頼みじゃで
谷にうもれて果てようぞ

おもいひそかにかけた娘(こ)も
都へ嫁(い)ってそれっきり
小櫛(おぐし)しのばす夕月よ
せめて竹笛吹こうかよ

掲載誌:『日本詩謡集』 昭和53年1月 220ページ