★沖縄の死闘終ったのは20年前の今日だった。乙女ら若人(筆者の可愛がっていた青年も)を含め戦死9万、住民の戦災死9万、合計18万人の碧血滲む沖縄で慰霊祭が今日糸満で営まれる。「さらば祖国よ栄えあれ」と18万人散華して20年、沖縄「県」が「祖国」へ戻るのはいつの日か。「東洋平和のためならば何でいのちが惜しかろう」と多数「惜しいいのち」をすてたが、沖縄=ベトナム=米・中・ソとつながり、核戦争の危機が迫っている。恰も昨夕日韓国交正常化の基本条約等の調印が行われたが両国内でも野党反対し北朝鮮・中ソも攻撃している。ドイツ・ベトナム・朝鮮は同一民族が米ソに引き裂かれて殺し合い、腰抜け日本は米ソの谷で派閥争いに夢中だ。この時局を慨嘆する村松正俊、中村漁波林氏らは詩人連邦で烈々祖国愛・人間愛の筆をとっているが、愛する祖国を「祖国を売る」政治屋共にまかせておいてなろうか。
★沖縄出身の熱血愛国詩人小田天界元代議士は経営する全東京新聞で毎号憂国慨世。破邪顕正の筆陣を張り、祖国を平和を人類を熱愛する詩・謡を発表しているが、6月2日小田急百貨店で日本民族生存確保同志会を結成、作家森川哲郎氏らと共に救民の志士結集の実践へ乗り出した。“詩人は須く哲学者・科学者・宗教家・予言者で革命児であるべきだ”とする筆者の持論を地にゆくものだ。真の詩人(自慰的・売笑的な似而非詩人は別)は今こそ象牙の塔から街頭へ躍り出て、西郷隆盛でないが『敬天愛人』の聖火を翳すべきでないか。ダヌンチオの如く!
★5月5日、本誌の名誉社友徳永隆平(日本紀行文学会会長)同人鷲森かずさ君らが箱根権現坂口の石畳復元に労力奉仕し文化財保護に努め、5月16日朝小汀利得氏がTV「時事放談」でこれをほめた。資本家共が金儲けのために古都をはじめ祖先の遺産を破壊しつつある時、九牛の一毛であっても徳永君らが単なる『歩こう』でなく文化財保護への実践は尊い。また市原三郎君の花園詩人社は6月26日第3回慰問を千葉養老院に開き詩・謡や品物で身寄りのない老人を慰めたし、日本歌謡学術協会も今年から母子寮・孤児・老人ホームを慰問することにしている。こういうのが本当の詩人の姿というもんだ。ミイハア族に迎合ばかりしている徒輩、以て如何となす?
(40.6.23中山輝)
掲載誌:『詩と民謡 北日本文苑』第23巻 七・八月合併号 復刊56号 通巻156号 1965
北日本文苑詩と民謡社