随筆

「詩界随想 詩人・政治・愛・人」

☆「元天涯布衣 不測登高閣」「秋の日はつるべおとしよ 乱れ髪 しんとして われ荒磯に立つ」は、詩人知事の本領を発揮して不三選を断行、十月六日兵庫県知事をすてた阪本勝氏の心境詩だ。詩人は本来、革命児・哲学者・科学者・教育者・宗教家等々であるのが本筋。ダヌンチオ、頼父子等々いわずもがな。日本の詩人は多く竹林の七賢人の如く政治(現実)の裾にいるが、東京都知事選に出馬する阪本氏の意気を壮とすべきだ。尤も本誌同人からは詩人山本宗間(淳歌)氏は衆院社党候補に確定し、鈴木勝氏は千葉県議として、早川数江女史は調布市唯一の女市議として活躍中だし、同人に准ずる浅地央氏は富山市議長を終て富山県議として活躍中だ。詩人よ、各界の先駆者たれ!と改めて叫びたい、のは筆者だけであるまい。
☆明治時代からの童謡ハトポッポの作詞者、大阪府池田市・東くめ媼(八六)は先年故郷和歌山県新宮市の名誉市民となったが、十二月八日浅草の境内に歌碑が建てられ祝福を受けた。一篇の童謡の光、斯の如し、だ。作曲した滝廉太郎のおかげもあるが「愛の詩」の故だ。然り「愛の詩」こそすべて「愛」を冠する政治・教育・科学等一切の根だ。基督も釈尊も老子も愛の詩人であった。真の詩人こそ純粋な愛の宣布者なのだ。
☆佐伯孝夫氏の作詩三十年(三千曲)記念リサイタルが十二月二日開かれたが、才能の故でない。三昔前「詩人の前に先ず人であれ」と説いた持論は今も然りだが、作歴でなく“人”の如何を佐伯氏も示した。川柳人雉郎でもあった吉川英治氏は作家としてよりも“人”として愛惜されている。凡百詩人の末座にいる筆者も常に“凡人”でありたいと願っているばかりだ。(T・N)

掲載誌:『詩と民謡』1963年2月号