その他

「コップ酒」

くらい場末の 居酒屋で
やせ肩落とし コップ酒
  けなされ通しの 阿呆だけど
  見返せる日も あるだろと
  煙草奴(め)目尻を ぬれさすか
    「ねえちゃん 梅割り もう一本」

みぞれ窓うつ 居酒屋で
よそ者同志 コップ酒
  故郷へ帰れる 身じゃないが
  胸張れる日も あるだろと
  からし奴(め)涙を 流さすか
    「ねえちゃん アジ天もう一丁」

割れた木椅子の 居酒屋で
ドタ靴鳴らし コップ酒
  うだつあがらぬ 身過ぎだが
  花の咲く日も あるだろうと
  大将おれまで 泣かすのか
    「ねえちゃん おあいそ 達者でな」

中山 輝 明治三十八年富山県生まれ、早大中退。昭和二年日本海詩人を創刊。昭和五年「詩と民謡」を創刊して今日に及ぶ。詩集、童謡集、民謡集などあり。

掲載誌:『日本歌謡詩選』 第七集 70ページ