初めてあいし 丘の上
野茨(のばら)の花に 似て白く
君も匂いぬ 眉月に
ああ ふるさとを離れきて
都の路地に 住みわびて
幾とせ過ぎし
遠き日の お下げ髪の ひと 今も 生くるや
愚かなるわれ 返らざる夢に生きむかな
別れて久し 城の跡
さくらの花に 似て白き
君も笑まいぬ 夕月に
ああ ふるさとをすててきて
ちまたの辻に 立ちわびて
幾とせ過ぎし
若き日の 涙ぐみし ひと 今は いかにや
愚かなるわれ ひそかなる愛に果てむかな
忍びて泣きし 坂の道
木菫(もくげ)の花に 似て白き
君も誓いぬ 川鳴りに
ああ ふるさとを逃(の)がれきて
ネオンの虹に 寝(い)ねかねて
幾夜を過ぎし
往きし日の 病(や)みかちの ひと今も いますや
愚かなるわれ 一つなる恋に死なむかな
掲載誌:『日本歌謡詩選』 第四集 85~86ページ