貧しさとは何だろう
貧しい石は丸裸だ
草も木も泥も その貧しさの中に生きている
真珠は海底に埋れ 仮初の傷に真実を求めた母のいけにえに生き
砂金は時間に洗われて偽わりをすてた白砂に埋れたまま
みな 貧しさに生きている
いや 貧しさだけが真実なンだ
でも みな 地上に顕われたばかりに死に
それら 可哀そうな死の上に
生きていた時の貧しさの上に
偽わりの光がみちている
金貨は砂金の死の上で汚され
人間はそれらの「死」をまとうて奢りに胡坐をかいている
真実は 核心の富は 虚空に輝いているあの金平糖の星のように
高貴は貧しさの中に 天真爛漫な風の中に ペンペン草が潮風に吹かれて歌っている屋根石の下に
母と姉の浴衣の片袖がおシメと化(な)って白雲を呼んでいる竿の列に
―昭和37・10・11夕―
掲載誌:『詩と民謡 北日本文苑』第21巻 八月号 復刊36号 通巻136号 1963 北日本文苑詩と民謡社