「花は散るために」

花は散るために咲き
草は枯れるために芽吹き
石は砕けるために張り詰め
鳥は落ちるために翔け
水は逃げるために待っている

君も永久に消えるために会いに来てくれたのだろう
もう二度と戻らぬために慰めてくれている光と共に

あの山も崩れるために背伸びしているな
雲に捲かれて もはや雲になった気で…

みんなどこかへ隠れていくための装いで息を凝らし
それぞれ何もない方へ向かっている
(42・4・26)

掲載誌:『日本詩』 第25巻・復刊80号 通巻180号 1967 11・12月号