「山がうとうと」

山がうとうとしてるから
海もうとうとしているな
光が子守をしてるから

山がなぜだかほえ出した
海も白い歯むき出した
星まできつい目をしてる

暗さがだんだん深いので
ひとりびとりじゃさびしいで
せつのうなってかなわんで

つかれて腹這う海の瞳(め)へ
山が姿を植え出した
やきもちやきの雲がきて
海と山との仲さいた

 さあ このあとはお楽しみ
 ではお休みね またあした
(40・10・2後2時上野~神田)

掲載誌:『日本詩』 第24巻・復刊64号 通巻164号 1966 5月号