山は流れる 水の上を
山は走る 光の中を
山はすわる 草の下に
山は眠る 私の横で
私が眼をさましたら
山は吠えていた
雲の向うに何かみえるらしい
そういえば何かがみえるようだ
眩しくて それが何なのかよく判らぬが
それで山にきいてみている
山は黙っていろと 片目つぶってみせる
また山が走り出した
私も走り出す
山の頭に乗っかる
いつのまにか山が私に乗っかっている
(40・12・1午後3・30有楽町)
掲載誌:『日本詩』林光則詩集「朱泥」出版特集 第24巻・復刊62号 通巻162号 1966 2、3月合併号