「石」

外界へ張りつめていなければならぬ真実の哀しさに
眼は内部へ向けられたきり
そこにはもはや光も風もない
無限がひろがるきり
石の名が木になろうと鳥になろうと
象が限界を顕わしているだけ
有無は同じ座だ
―三七、四、四・車中

掲載誌:『詩と民謡』1962年5月号 20巻3号