木も、石も、眼をなくした。光がないので動かない。動けない
誰か、眼にみえないものが、光をさらっていってしまった
誰か、愛し続けているものが、一つになるために
木や石のいのちの中へとけこんでいってしまったのだろう
とり、けものは、眼があるゆえに、動きたくなり、動かねばならず、ついに滅び去らねばならぬことを識り、光のある間そこらをかけめぐり
光が逃げてしもうと、木や石のかげへ来て、風を避け、黙って眼をつむり、木や石に肌をすりつけ、安らかな座を占めて、微笑みの雲に乗る
木や石は、眼をなくしたばかりに永劫へ列り、天と地を結ぶ
とりや、けものも、光から離れてはじめて無明に密着して永劫に列りはじめる
いや、永劫は、不滅は、光は
形あるものの中に仮に顕われて部分を、限界を示したのだ
(三六・一〇・一二“眼”の④早川嘉一君に贈る連作の一)
掲載誌:『詩と民謡』1962年1月号 20巻1号