「犬」(イヌ年に因む)

あの犬はどこへ行ったろう
新しい吹雪の中をシッポふりふり
おぼろな初日を拝みにいったきり

あの犬はどこへ消えたろう
オローラがくるめく雪原をただ北へ北へと走り
仲間からはずれ 氷の家の人々が呼ぶのもきかず…
北に何があるというのだろう

あの犬たちは生きている
お宮を守る高麗(こま)犬となったまま
渋谷駅前の忠犬ハチ公になったまま
凍(い)てつく三日月が覗くと
遠い先祖を慕うて声を空しく呑んで吠えている
新しい希望を呼んでいる

(44・12・18夜12時半)

掲載誌:『詩と民謡』1970年1月号 28巻1号