ひっそり黙って笑って翔んでいこう
時空が張った見えぬ巣に捕えられ 何もかも失って 消え果てよう
永い間 暗黒(くらやみ)の中でひっそり息づき
やっと慈母の光にあえた嬉しさに 動かぬものに縋り 過去の殻をぬぎすて
光を迎えては泣き 光を送っては泣き
あちこち飛びまわって短いいのちの限りをつくした
何を想うことがあろう
与えられたいのちをお返しするだけ
ひっそり元の暗黒へ帰ろう
何もないふるさとへ帰っていこう
(44・11・20午後一時巣鴨~田端)
掲載誌:『詩と民謡』1970年1月号 28巻1号