わざと すげない ふりをして
じっと こらえて 来た 村はずれ
笑って 下さい お地蔵さん
思わず 涙がどっと出た
なくな 谷間の 山鳩よ
あの娘(こ) のしあわせ 頼んだぜ
情知らずと いわれても
義理を しょって 村を出る
無理に つれない こというて
あとも みないで 来た 峠みち
笑って 下さい お月さん
たまらず 恋しさ こみあげる
呼ぶな麓の ともしびよ
あの娘(こ)を 泣かしちゃ いけないぜ
女知らずで いつまでも
意地を 抱いて 旅をゆく
―三六、六、二七―連作の一
掲載誌:『北日本文苑 詩と民謡』1963年6月号 21巻6号