①
赤い夕陽が おちる丘
青いすゝきよ なぜに泣く
おれも男だ 馬鹿だけど
泣いてなんかは いやせぬさ
あいつ あいつひとりを 信じただけさ
ひとり だまって 旅へいく
②
ほそい野みちが 消える果て
くらい渚よ なにを泣く
おれも男だ 馬鹿だろが
涙なんかは 出しゃせぬさ
あいつ あいつひとりが 女じゃないさ
ひとり わらって 生きていく
③
遠い故郷は 空の果て
燃える星座よ だれを呼ぶ
おれも男だ 馬鹿だろと
未練なんかは 持ちゃせぬさ
あいつ あいつひとりが よければいいさ
ひとり 祈って 旅をいく
―三六、六、二四 車中―
掲載誌:『北日本文苑 詩と民謡』1963年4月号 21巻4号