「貧しいから」

何ももたないから いや 何ももてないから
何もない天へのぼる
すッ裸だから 底ぬけの腑ぬけだから
泥の上に居れない

黒に塗りこめられていても
芯に光が息づいているから
根元へ時間に乗っかっていく

貧しいからこそ豊かなものでいっぱいだ
誰も知らない いや 本人も

虚しさだけが 虚しさをみたす光だけが 知っている
知っていて 知って…

(三七・九・一一午後4・40分富山への名立駅近い車中)

掲載誌:『北日本文苑 詩と民謡』1963年3月号 21巻3号