青山なみを 遠くみて
古城むなしく 幾世経(へ)し
ああ 天守閣 ものいわず
ひなかの月を 傾けて
むかしのゆめを 石段に
描くとちるか さくらばな
白壁映(は)ゆる 石垣に
凭りて何呼ぶ つたかずら
ああ かがり火に 花かざし
みめうるわしき ひと舞いし
園生よいづこ 若草を
こえゆく蝶の かげかそか
古城をめぐる 八巷(やちまた)は
浮かればやしの 宵まつり
ああ松風も 濠水も
たけゆく春を 装えど
たにとてかくも 人の世は
移ろいやすく 寂しきぞ
中山輝 作詩
掲載誌:『詩と音楽と美術の集い』