溪の感情がのしあがつて山をこしらへてゐる。
で、うんこをしたあとの肛門のすがすがしさは
おつぴらきのぐらすのなかの虚しさだ。
で、鳥は雲とゆきあふと挨拶して
ゆうゆう うんこを影へおとし
で、霧はつぎつぎに灯を濡らして消して何にも云へないで瀧音をお腹に姙む。
で、風までが すが眼のよそよそしさで、さつさと逃げるし
ときたま、風までが、すが眼のよそよそしさで、さつさと逃げるし
ときたま、のほほん、溪は口を圓めて
(あいつの眞似……)
ぼくの往復切符の片切れへ
わざとらしい呟ばらひしてせんちめんたるをのつけてくれる。
溪はいゝな。どつこいしよのしよ。
ぼくも溪のすみつこへもうひとつ小便のおまけして
さて、のうのうと“馬鹿野郎”
――昭和十年九月二十三日――
掲載誌:『歌謡詩人』昭和十二年正月号