「とり」

つ …… 翔(と)んでゆく
そらに即(つ)いて一直線に

あのとりには雲のこころがある
あのとりはとりの形した何かだ

やすらかに 翼(はね)をひろげたまま夕日を閃かし
こゑもなく翔(と)んでゆく

ああ あのとりは
もうかへらないひかりかもしれない

掲載誌:『石』 中山輝詩集 昭和5年9月 69ページ『ふるさとの顔』