「盲人」

與市はあゆむ――
こつこつ ほそい竹杖で
埋(うも)れてちらばる石に觸(ふ)れ
いつものところに在(あ)ると識(し)り
その石の指(さ)す方(かた)へ

與市はあゆむ――
めぐりのものはてんでにひかり
觸(さは)れば在(あ)るとただちに應(こた)へ
誰かがさしだす慰藉(なぐさめ)の掌(て)
その掌(て)の變化(へんげ)のちらばりと信じ

進む――
遠くへ
五官の穴にさびしさを吹き
ひかりをおよぐ夜雲(くも)のごとく

掲載誌:『石』 中山輝詩集 昭和5年9月 48~49ページ『分身』