「指はまなざし――或はボラテラナスへの詩」

闇黑(やみ)と在(あ)れば
闇黑(やみ)と化(な)り
指は まなざし

物體(もの)に觸(ふ)れ
觸れて内在(うちら)の光をかんじ
ひかりを放つ像(すがた)をかんじ……

ああ 久しく闇黑(やみ)と在(あ)れば
指はまなざし
觸覺(さは)るまなざし

註 ボラテラナスは十世紀初めの頃の伊太利人、盲目の彫刻家、暗室で法王の肖像を彫つて有名。

掲載誌:『石』 中山輝詩集 昭和5年9月 46~47ページ『分身』