「觀音さま」

――ひとつ金儲けさして下さるやう
――南無大慈大悲の觀世音

ふと 仰げば 燈明のむこふから
觀音さまは眼をほそくしてにやにや笑(ゑみ)を浮べ
右掌(て)の指で輪をつくり
左掌(て)ひらいて「頂戴な」

 觀音さまも
 やはり まるいもんがほしいんかなあ
 道理で賽銭箱があるんかなあ

掲載誌:『石』 中山輝詩集 昭和5年9月 22ページ『天國』