「点」


この点を軸に空間は廻転し、時間をこぼす

この点は遠くから来た対立の窮極

その一点から影が円錐形に出発した
形が拡がりの裾に限界を喚んだが
限界など どこにもなかった

やがて虚しさだけが時間を貼ったとき
限界が影を包みはじめた

時間と空間が交わってこの一点になった
残された孤立の断面
その減りゆく年輪へとせり上がる海面

点は おしまいに点でなくなる
無限の凝縮だ

掲載誌:『詩と民謡』 昭和35年3月 2ページ