昨年七月六日夜佐藤工業KK会長佐藤助九郎氏邸の句会に列しての即興
○称名滝はみえず身を捲く霧速さ
円虹や鳥を失い大雪渓
水打をひそと聴くかや庭の石
○せせらぎを少し動ける麦酒かな
階段の足絶えまなし花氷
花氷とり残されし社長室
籠枕山の葉みんな翻る
○竿の端に寄りし浴衣や海鳴れる
滴りの音深沈と呼ぶうつろ
囃子の殻すててあり大柱
吹かれいる囃子ごしに大入日
山開き雨となりたり鳥失せて
陽の中ぞ動けよそこの青葡萄
近まれる国境青く道をしへ
畳まるゝ日除ネオンの今覚めし
心太目近に翳る段五百
寝つく子に風鈴そつと外しけり
飛び飛びに窓風鈴と葱釣り
袂曳く童に水からくりは鳴でて
水中花バリカンの音うとましく
蝉一つ居りてつゆけき大座敷
常願寺川水かれはててねむの花
○紫陽花へ立山青く痩せんとす
○山椒ばら夏菊句座を占めかねつ
(註)○印の五句出詠し何れも好評を得たり。一時間内の制限の即興句なれば乱作第一か。反古山積の社の机上の下より草稿出でたるにより年余以前の黙句なれど敢て余白へ掲示し江湖の叱正を仰ぐ資とす。
(昭和三二、八、一四)
掲載誌:『詩と民謡』 昭和33年8月 50ページ