いくら喧嘩して別れたつて
仕事の暇暇(ひまひま)にやあの歌をうたはうぜ
おれたちが抱きあつて泣いた夜
誰からともなくうたひだしたあの歌を
おれたちのつまらない感情のいがみあひ
そんなもんなんかどうだつていい
みんな!
お互ひに離れあつてゐても
お互ひに憎しみ合ひ罵りあつてゐても
あの歌だけはおれたちのものなのだ
おれたちの歌
おれたちの鼓動
おれたちの喊聲
あの歌はおれたちの足音だ
さあみんな!
おもひおもひにちらばるまへに
もう一度 あの歌をうたはうぜ
みんなしてうたふこの最後を
あの歌のために美しく飾らうぜ
掲載誌:『石』 中山輝詩集 昭和5年9月 35~36ページ『黑旗』