「神さま」

 「みんな わかると樂しうない
  何でも出來るとおもしろない」

神さまは
全知全能の神さまは
そこで こつそり掌(て)を樹(き)とし
髪を草とし 息吹(いぶき)を風に
姿を消してしまはれた

それで人人(みんな)は泣いぢやくり
 神さまどこや
 神さまどれや

掲載誌:『石』 中山輝詩集 昭和5年9月 20~21ページ 『天國』