「松」

松は信じていたものに傷つけられて
思わず知らずひっそり泣き続けていた
そのあげく目脂(めやす)で何も見えなくなってしまった
松はもう何も思わなくなり
なにもない果てを仰いで
ありのままにしている

(註)「目脂(めやす)」は「目脂(めやに)」ヵ

掲載誌:『人生道場』 昭和48年7月 30ページ