「壺」

しゃれこうべを真似て もう二千年も眠りこけていた 縄跡を残している欠片(かけら)
作ってくれた人も 使ってくれた人も どこにもいないが
かわりにめざめて 遠く去ってしまった海鳴りをきいている

いずれ ガラス越しに
ベレー帽や ネクタイや パンタロンなんかの行列の見せ物にされるだろう

あの腹いっぱいのんだ清水も
遠いところへ行ってしまった

ブルドーザーに跳ね飛ばされた赤土につれられて
眩しい光にじっと時間をみつめている

掲載誌:『壺』 昭和45年10月 5ページ