「お嘉代」

お嫁にいったは山の向(むこ)
山裾きれた海の際
鱗ちらばる村だそな

お婿さ死んだは沖の向
岬曲った空の下
暗い吹雪の晩だそな

戻ってきたは谷の村
笑い忘れてきたお嘉代
峠にときどき いたそうな

山の裾から来る風に
吹かれちゃ 遠い沖をみて
ひとりで泣いていたそうな

唖でのろまなあのお嘉代
峠に死んで いたそうな
吹雪がはれた朝だそな

掲載誌:『現代民謡詩選』 昭和31年6月 184~185ページ