「終り」

石は砕かれるために凝縮し
曇はちりぢりになるために往き
光は消えるために走る

あの枯れ葉も出来るだけのことをして
満ち足りて
頂上の梢を離れ
暗い谷底へ翻りながら散っていく

おれも醜い死にざまをしないために
美しい生き方をしてゆこう
残り少ない時間の坂をゆっくり下りながら

そういえばみんなに終りがあるようだ
終りがあるということはいいことだ
もしもみんなに終りがなかったら
どんなにさびしく辛いことだろう

略 歴 明治38年富山県生れ。早大中退。昭和2年日本海詩人創刊。同5年「詩と民謡」(日本詩)を創刊して今日に至る。昭和5年詩集「石」その他刊行。日本詩人クラブ評議員。日本詩人連盟相談役、日本歌謡芸術協会常任顧問等。

掲載誌:『現代詩選』第十六集 昭和52年7月 166ページ下段