枯れ葉(遺稿)

無為 昭和41年12月

光を織り 匂いをはねて散っていく
形のないところへ 何もないところへ

何も知らず 何もないところから生まれさせられて
ただ滴り落ちる時間を精いっぱいなめて
あるがままに 生きられるだけ生きて来られたのだから
もう何も思うこともないし これ以上
何をすればいいか ということも判らなくなった

何も知らなかったから 何も判らなくなったからよかった
だから 何か判るかも知れないのは これからだ
この気楽さ 安らかさ
光へ埋れていく梢よ お元気で
散らねばならぬ時に 散っていく
それが本当の歓びの羽ばたきだ

つまらぬ形や影から脱け出て 何にもないように
みせている真実に溶け込める有難さだ

掲載誌:壺37号