☆昨年末「現代詩人賞」を受け「詩壇にもカミナリ族登場」といわれたという沼津市の畳職人藤森安和(二〇)という青年が「十五歳の異常者」という詩集を出し、その一篇が今春某週刊誌に紹介されていた。それを読むと、エログロナンセンスを狙ったものらしいが、ただ嫌らしく汚醜、嘔吐を覚えるような下劣なワイセツさで詩という名に値しない。異常時代だから異常であればいいという積りかも知れぬが「現代詩人賞」なるもの自体へも疑問が持たれる。詩は幅広いにせよ、ワイセツ、下劣は排さるべきだ。詩は自他ともに感動をよび、プラスになるものであるべきだ。
☆エロチック、セクシームード、ピンクムードの時代といっても「黄いろい桜んぼ」や「キッスの味はどんな味」等の流行歌?の煽情は酷い。売らんかな主義もここに至っては言語道断。ウッフンとかチュッチュッで金にしようという商魂に作詞家や作曲家が屈するのは情ない。エログロナンセンスでもせめて大正末期、昭和初期の時代のように香りと気品があってほしい。散文時代だから、なおさら詩が「地の塩」でなければならぬ。
☆童謡も「子供だまし」だ。別に「赤い鳥」時代とかマザーグースなどにかえれとは云わぬが、現状では浅間しい。媚態もいい加減にしろと云いたい。少しは土性骨がすわってもいいのではないか。先駆者や開拓者の気構えを少くも若手に望んでやまない。(T・N)
掲載誌:『詩と民謡』 昭和35年8月 1ページ